海に浮かぶ世界遺産として有名な軍艦島(正式名称は端島)は、閉山から50年ほど経った現在も当時のままの姿を残し、多くの人の心を引きつける魅力ある場所です。一般の立入禁止が解除され、上陸可能になると毎年多くの観光客が訪れ、昭和当時の生活の様子を肌で感じられるようになりました。
今回はそんな世界に類を見ない魅力あふれる軍艦島について、実際に上陸した体験と共に、島の真実についてお伝えしていきたいと思います。
軍艦島とは
長崎半島沖に浮かぶ無人島・端島で1810年ごろ、海底に石炭が埋蔵されていることが発見され、三菱が島全体を買い取り本格的な採掘が始まりました。明治時代の主要エネルギーは石炭だったため、大人数の働き手を雇う必要があったのですが、毎日内陸から船で通勤するのは大変なのでいっそ家族みんなで島に住めるよう住居なども建設されていきました。
当時、三菱重工の長崎造船所で建設中だった日本海軍の戦艦「土佐」に島の様子がそっくりだったことから「軍艦島」と呼ばれるようになり、ここで採れた石炭が製鉄用原料炭として供給され、日本の近代化に無くてはならない重要な役割を果たしたのです。
当時の生活の様子
島の半分以上は鉱場でしたが、段階的に埋め立てを行い元の面積の3倍ほどに拡張された端島には、最盛期でなんと5300人もの人々が生活をしていました。これは当時では世界一の人口密度で、東京都23区の9倍にも及び、現在もその記録は破られていません。
狭い面積の中にこれだけの人々が生活するために建てられたのが、日本初の鉄筋コンクリートのアパートで、1番高いものは7階建てでした。他にも病院や小中学校、理美容室、生協販売店、映画館やパチンコといった娯楽施設まであり、不自由なく生活できる環境が整っていたのです。
また炭鉱労働者は高所得でしたので、まだ日本でそれほど普及していなかったカラーテレビがほとんどの家庭にあったり、主婦たちは生け花教室に通ったり、緑のない島なのでアパートの屋上に庭園を造って植物栽培をしたりと、当時からすると最先端の暮らしをしていました。
島の生活で最も大変だったのは水の確保で、1957年に海底水道ができるまで「水券」と引き換えの配給制だったようです。他にも台風の被害も大きく、対策として堤防を築いたり排水溝や排水管を作るなど、生活を守るために様々な工夫がされました。
閉山になった現在の姿
人々は軍艦島での生活を謳歌していたのですが、時代は移り変わり工場などで利用される主要エネルギーが石炭から石油へ移行されると、石炭は全く売れなくなりついに炭鉱は閉鎖されてしまいました。
それに伴って住民たちも島を出ないといけなくなり、1974年1月からわずか3ヶ月ほどで全島民が島を去り、軍艦島は無人島になってしまいました。閉山後35年間ほどは、島の住民でさえ上陸が許されなかった孤島となってしまったのです。
長年、雨風にさらされ廃墟と化した軍艦島でしたが2000年、家電や家具など昭和の生活の名残がそのまま残されていることが「近代化の遺産」として注目されるようになり、2009年から一般の観光客もツアーなどで上陸が可能になりました。
軍艦島デジタルミュージアムもおすすめ
クルーズに乗ってツアーで実際に軍艦島をその目で見学するのも良いですが、港近くに「軍艦島デジタルミュージアム」という施設があり、最新のデジタル技術を使って当時の生活の中にタイムスリップができます。
上陸ツアーは建物崩壊の危険がある立入禁止区域などがありますが、ミュージアムではそのような見ることができない場所も巨大スクリーンなどで見学できるのです。
採掘現場を再現されたプロジェクションマッピングでは、トロッコに乗って地下深くの炭鉱現場へ行く様子を体感できたり、1950年代の当時の軍艦島での暮らしを完璧に再現された部屋を見学できたりと、見どころがいっぱいです。
軍艦島デジタルミュージアム 住所:長崎県長崎市松が枝町5-6 TEL:095-895-5000 営業時間:9:00~17:00(最終入館16:30)不定休 入場料金:大人1800円、中高生1300円、小学生800円、幼児500円、3歳未満無料 ホームページ
軍艦島ツアーのお申し込み方法
軍艦島の見学ツアーを取り扱う船会社はいくつかありますが、今回ご案内するのは私が実際に利用した「軍艦島コンシェルジュ」です。船内では軍艦島についての案内や資料映像も流れるので、実際に島を目にした時は感動が倍増します。
チケットの種類はいくつかあり、上陸・周遊のみのスタンダードプランから、先ほどご紹介したデジタルミュージアム付きのプランもあります。(ミュージアム入館料が半額でお得!)チケットの詳細はこちらから。
上陸・周遊(通常)プラン | 上陸・周遊(優先乗船)+ミュージアム付きプラン | |
大人 | 4000円 | 4900円 |
中高生 | 3300円 | 3950円 |
小学生 | 2000円 | 2400円 |
未就学児 | 1000円 | 1250円 |
軍艦島コンシェルジュ 住所:長崎県長崎市常盤町1-60常盤ターミナルビル102号 TEL:095-895-9300 営業時間:8:15~17:25 ホームページ
またこちらからも軍艦島ツアーの予約が可能です。↓
まとめ
いかがでしたか。今回は世界遺産、軍艦島についてお伝えしました。私は軍艦島の周遊のみのツアーと上陸もできるツアーの両方に参加しましたが、おすすめは絶対に上陸ツアーです。やはり船の上から眺めるのと実際に足を踏み入れ、その場で生の空気を感じるのは全く違います。
この小さな炭鉱の島で多くの人々が生活していた当時の様子を想像し、そして現在の朽ち果てた姿を見て、時代の流れの残酷さを体感するのは貴重な経験になるでしょう。軍艦島は年々老朽化が進み、もしかしたらいずれまた危険ということで入山禁止になってしまうかも知れません。その前にぜひ1度は上陸し、間近で見学して頂きたいです。
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